オーディオ回路の改良 2


オペアンプのツインモノラル使用


レーザーターンテーブルは、レコード盤に刻まれた音楽情報を収集するために左右2本のレーザー光をレコードの溝壁に照射して、その反射光を2つのPSDで受光して電気信号に変換するためセパレーションに関してカートリッジより恵まれています。

 

その信号は、オーディオ基板まで左右2っの独立した回路(ツイン・モノ)となっていますが、最後のオペアンプで一つのチップに入ります。(2回路 ステレオ)×1

もちろんチップの中でセパレーションは確保されているのですが、折角ここまでこだわってきたので、オペアンプも左右独立したもの(1回路 モノラル)×2 に変更したくなりました。

 

1回路で良いオペアンプと言えば、Burr-Brown OPA627BPが有名で、マーク・レヴィンソンをはじめ多くの高級機にも使われ定評があります。 

OPA627BPとMuses 01 

OPA627BPをヘッドフォンアンプに使用した事がありますが、全く色付けを感じさせず、堂々とした風格のようなものがありどんな音楽でも聴かせてくれる懐の深さのようなものがありました。

 

経験では供給する電圧が低いと本来の良さを発揮しません。

OPA627には通常品の627APと選別された627BPがあります。真空管で言うところの12AX7Aと12AX7WAのようなものです。

 

音には好き嫌いがあり好みは千差万別です。そんな中で多くのマニアから認められるという事は大変な事ですが、OPA627BPにはそれだけの魅了があると思います。

 


実装してから本領を発揮するようになるまでには長めのエージングが必要です。おおよそ10時間程度で音質が変化し落ち着いてきました。

 

Muses01と比べて極端な音質の変化はありませんが華やかさは若干控えめとなり低域の量感は最低域までかなり豊かです。

また、音場感の中に透明感も加わりました。

 

この段階で、少なくとも比較用としていたトーレンスのプレーヤーよりレコードに刻まれた音を忠実に再生出来るようになったと思います。

 

もちろん音質だけはなく音楽自体も楽しく聴こえます。

セパレーションは素晴らしく良く、気持ちが良いほど定位します。

 

音に躍動感があり、圧迫感がありません。

また、音調は暖色系のなので長時間聴いていても疲れなくなりました。

サブ・ウーファーを使うと暗騒音も明瞭にでてきます。

 

 

この時点での周波数特性


フォノイコライザー部の抵抗とコンデンサーの交換


2014年の暮れ近くにフォノイコライザーの抵抗を変更しました。

それまでは、タクマン電子のREY オーディオ用 金属皮膜抵抗 (1/4W) を使用していましたが、気まぐれでVISHAY (VSR 無誘導金属箔抵抗 0.25W)に変更してみたのです。

 

VISHAY VSRは、超低雑音・高安定度の特殊な形をした抵抗で、先程のタクマン電子のREY オーディオ用 金属皮膜抵抗と比べると 20倍も高いのですが・・・

 

これを聴いてしまうと今までのオーディオ用抵抗は使えなくなりました。

同じ回路で、抵抗以外は殆ど同じパーツなのですが、新たな基板の音はまろやかで透明感があり妙な張り出し感は無く自然で優しい音調です。

 

VISHA VSR抵抗


 

それでいて、ちょつと耳を澄ませば音の情報量は圧倒的に増えているのに気付きます。

低域の伸びも良くなり、それまで感じていませんでしたが詰まっていたのかな? と思うほどに気持ちの良い音になりました。

 

抵抗の変更でこんなにも音が変わるとは思ってもみませんでした。

 

馬鹿な例えですが、音に抵抗がなくなったようです。小さな信号を扱う音の入り口には絶大な効果があります。

 

また、2015年1月から今まで使用していたタンタルコンデンサーを1本800円もする松尾電機製の高信頼度品に変更し、満足の出来る音に更に近づきました。

 

オーディオ基板のパーツを考える際には1本が1,000円以上もする抵抗や1本800円のコンデンサーなど考えもしませんでしたが、間違いなく効果がありました。

 

実際に基板に組み込んで2日程エージングしたところ更にしなやかな印象となりました。

 

松尾電機製

タンタルコンデンサー


VISHAの無誘導金属箔抵抗には、VSRの他に更に価格が高く0.6WのZ201があります。

自分でも呆れてしましますが、VSRでここまで変わるならZ201に変更すれば更に良くなるのでは・・・という思いが頭を離れなくなりました。

 

もうこうなると、何としてもZ201を組み込んでみたくなり清水の舞台から飛び降りたつもりで、Z201を20 本(L・R10本づつ)購入し回路に組み込みました。

 

何という事でしょう ! ! ! 

 


今までVSRの音は自然でナチュラルだと思っていましたが、Z201を聴いてしまうと少し中高域にクセがあるように思えて来ます。

何も足さない、何も引かないそんな自然な音です。

 

抵抗を替えたってそんなに変わるものじゃ無いと言われる方もいらっしゃると思いますが、私も以前は抵抗でここまで音が変わると思っていませんでしたので気持ちは分かります。

 

しかし、ここまで変わることを知ってしまうと何でもっと早くこうしなかったのだろうと後悔してしまいます。

VSR抵抗に替えられた方が7月に拙宅にタイミング良くいらっしゃったので Z201抵抗に替えた音を聴いて頂いたところ、数分も経たずにVSR抵抗からZ201抵抗に変更して欲しいと言われました。

 

私一人が良いと思っている訳では無いようです。

 

LT-masuterシステムの改良


 

2014年12月にレーザーターンテーブルの最新モデルを購入された方からメールがあり改良をお願いしたいとの事でした。

STEREO誌、ホームページ等をご覧になってご連絡を頂いていたようで、レコード再生で目指している音の方向が私と同じようです。

リスクを伴いますので、実際にアップグレードした音を聴いて頂いてから判断して頂きたいとお伝えするとすぐに拙宅の音を聴きにいらっしゃいました。

 

クラシックを中心にヴォーカル等のレコードをお聴き頂き、ELPでは修理をしてくれなくなる等の説明もしましたが、その場で改良させて頂くことになりました。

 

マスター型オーディオ基板という内容がわかりませんでしたので、承諾をいただき内部を見せて頂きました。

私の観察不足だと思いますが、オーディオ基板部のパーツNo.は2008年に購入した私の基板と同様に見えました。

パーツ自体は異なりますが、回路が同様に見えたのは錯覚かも知れません。

 

2014年末 マスター型オーディオ基板の イコライザー部 〜 オーディオ最終段基盤写真です。

 

2008年に購入したレーザーターンテーブルのイコライザー部 〜 オーディオ最終段の基盤写真です。

 

マスター型オーディオ基板にはオペアンプのOP275は使っていないと言う方がおられましたので興味津々でしたが、改良させて頂いた基板には以前と同じOP275が使われていました。

 

私が行っている改良では、レーザーターンテーブル基板上のイコライザー部 〜 オーディオ最終段の回路等は全く使用しませんので、旧型でも最新型でも同様ですが・・・。(アップグレードを行った後の感想を2015年2月10日に頂きました。)

 

 

横溝 コンポブームの中で


横溝(横道)に逸れてしまいますが、オーディオメーカーに勤めていた頃、コンポブームという所謂スピーカーの59,800円、アンプの79,800円という価格帯に向けオーディオメーカーが一斉に商品を送り込んだ時期がありました。

 

ピークは約3年間、毎年のようにマイナーチェンジされて型番の最期にデジタル対応だと言わんばかりのDが付いたり、Mark ⅡになったりLimited等が付いて新たな技術訴求を行っていましたが、 基板自体変更され全く新たな基板になることもありました。

 

1年で企画から設計、製造、製品化するのは大変なことです。実際には8ヶ月〜10ヶ月で試作機が完成している訳ですから・・・

 

コンポブームが去って、純粋なオーディオマーケットは衰退してしまいましたが、メーカーの技術者は価格に縛られながらも自分たちの求めている音に向かい、考え、悩み、四苦八苦して製品化していたと思います。

 

メーカーであれば自分たちの目指した音が具体的にどんな新技術を使って完成したか、それを技術資料として発表し、いかに前のモデルより音が良くなったかを、具体的なスペック、グラフなど変化を示す資料を基に向上をPRしていく訳です。

これらが無く、単に音が以前より良くなりましたでは済みません。

 

当時は多くのオーディオ評論家の先生宅に試作機を持って頻繁に伺っていました。

 

沢山の思い出がありますが、KP-1100の試聴をして頂くため故長岡 鉄男先生に初めて電話をしたときの事です。

オーディオに興味を持った頃から雑誌等で記事を読ませて頂いていましたので、初めて直接お話しするのはかなり緊張していました。

 

初めての電話の事を今でも覚えています。

「K社 第一音響商品企画部の○○ですが、K社最期のアナログ・プレーヤーをお持ちさせて頂きたいのですが・・・」とモゴモゴして

何とか言いました、すると長岡先生は、「そう、最期のアナログ・プレーヤー、面白そうだね。聴かせて下さいよ。」と軽く仰って頂きました。

 

後日、箱船が完成する前だったのでご自宅の方にKP-1100の試作モデルを持ち込みました。

通常は、設計者を含め2〜3人で伺いますが、この日は私一人で伺いました。

早速組み立て音を聴いて頂いた後に、「これは良いね。良くできている。剛性も高いし価格も10万円を切っていて買いやすい。」

「中のアルミフレームはお金が掛かっているでしょう。音もしっかりとしていて価格以上の物でしょう。大きさもコンパクトでこれからのプレーヤーはこれ位が良いかも。」「このプレーヤーはしっかりした水平の台にインシュレーターを締め込んで使った方が良と思うけど足の裏のフエルトで滑るから滑り止めのシートも入れてあげれば良いね・・・」とにかくべた褒めして頂きました。

後にも先にも長岡先生に聴いて頂いた商品でここまで評価の高かったものはありません。

 

アドヴァイスを頂いたインシュレーターの下に敷く薄めのゴムシート(ハネナイトゴムシート)も商品の中に組み込ままれました。

その年1985年にスタートした共同通信社のダイナミックテストで「力強く、スピード感があり、音像が鮮明で音場が広く、躍動感がある。CD時代に輝くADの星といった貴重な存在」と評して頂きプレーヤーの大賞に輝きました。

  

今思うと、健在だったFM各誌、ステレオ、オーディオ・アクセサリー、ステレオ・サウンド等のオーディオ誌で執筆されていた殆どの

評論家の先生宅に伺い音を聴かせて頂きました。先生宅で聴かせて頂いた音は本当に刺激となりました。

これらの体験により自宅の音や装置のクォリティーが明確になりました。

 

この頃は忙しくて時期によっては1日に3人の先生宅に伺ったこともあります。

まだまだオーディオが華々しかった時期に微力ではありましたが関われたことを幸せに思います。