レーザーターンテーブルの改良
個人的な思い入れかも知れませんが、オーディオ機器も価格に見合った内容と外観は不可欠だと思います。
特にレーザーターンテーブルを購入してからその想いは強くなりました。
オリジナルのレーザーターンテーブルも単体で見れば機能的なデザインですが、先ず見た目から来る印象が他のオーディオ機器とかけ離れていて全く合いません。
その上、フィニャールの試作モデルをそのまま製品化したと言って良い樹脂をパネルにした質感は一般的なオーディオ機器とは異なります。そこで、筐体のデザインを変更して質感も上げられるよう新たに作ることにしました
とは言っても単に上辺だけのデザインや素材の変更だけでは面白くありません。
レーザーターンテーブル = アナログ・ディスク・プレーヤーという根本的な所からスタートして改良することにしました。
レーザーターンテーブルのアルミ・ダイキャスト・スターベース
KP-1100のユニファイド・アルミ・ダイキャストフレーム
レーザーターンテーブルの回転部、ピックアップ部など全てを支える部分はスターベースと呼ばれるアルミ・ダイキャストで作られたKP-1100同様のしっかりとしたものです。
このベースの上にターンテーブル回転用のモーターと約3kgのプラッターの上にターンテーブルが乗る形になります。
約3Kgのプラッターがスターベースにはめ込まれ、その上に約500gのターンテーブルが乗ります。
スターベースの上にターンテーブル駆動用のモーター、プラッターを組み込んだ写真です。
ステッピングモーター
レーザーターンテーブルを開発したフィニャール社はレーザーターンテーブルを製造・販売するために作られた会社で、オーディオがベースとなった会社では無かったようです。
このため、一般のプレーヤーで使用される駆動モーターとは異なり、サーボコントロールで細かな回転数に対応できるステッピング・モーターを使用しベルトドライブとしていることも一例ではないでしょうか?
このステッピング・モーターは、レーザー・ピックアップの駆動(移動)にも使われていますが、1回転を400分割できるため僅かな移動でも対応できます。
このようにプレーヤーの土台となるベースはしっかりとしていますが、オーディオ基盤やコントロール基盤、コントロール基盤、電源基盤、そして大型のトランスは、1mm厚の亜鉛鋼板に取り付けられます。
この厚さではどうしても心細いので、3mm厚のアルミに変更しました。
また、フロントのデザインも可能な限りシンプルにして、気になっていた全体の重量バランスもターンテーブルのスピンドル位置に来るよう調整して完成させました。
レーザーターンテーブルの足には、プラスチック製のインシュレーター?が着いていますが、裏のネジで外すとゴム足が出てきます。写真のようにゴム足は底板には付かず、底板に空いた穴からスターベースとゴム足を直に付ける構造となっています。
私のレーザーターンテーブルは水平がうまく取れなかったのですが、原因はスターベースと足の間にある1mm厚の鉄板が重さに耐えきれず凹んでしまったためでした。
オリジナルのベース
5mm厚新アルミ製ベース
旧・新ベース比較
1本の足でざっと6〜7kgの重さを受け持つことになりますが、重量のバランスが後ろ側に偏っているため、後ろ側2本はさらに重さを受け持っています。そこで水平が狂わず、凹まないように5mm厚のアルミ製ベースを4本作りセットしました。
次は筐体ですが、非磁性体で高級感のあるオールアルミ製にしました。
個人的な好みで、スノー・ホワイトを選びましたが、アルミ筐体の色で、スノー・ホワイトは一番手がかかるようで、色が決まれば、シャンパン・パンゴールドなど着色した方が筐体ごとの色の差が少ないようです。
デザインはCADを使わずイラストレーターを使用しておこないました。
なるべくシンプルなフロントパネルにしたかったため、元々18ヶもあったボタンの中から通常の再生には使用しない機能のボタン4ヶを減らしました。
現在のオーディオ製品の電源SWにシーソー式は使われませんが、ELPは拘りがあるようで最新モデルにも使っています。
私は嫌なので自照式のプッシュSWにしました。
プレーヤーとして肝心な防振対策のため天板、側版の裏側にはfo.Qという制振材を貼り外部、内部の振動を減衰させています。
また、底板に配置しているコントロール基盤やロジック基盤は特殊樹脂フローティングと樹脂ネジを使用して振動の影響や磁気の影響を受けないよう配慮しました。
下の写真はオリジナルの筐体と新筐体ですが、単純に重量の差が7kgあります。
ELPオリジナル筐体パーツ
独自のオリジナル筐体パーツ
レーザーターンテーブルでは、スターベースを直接筐体にネジ止めしてありますが、これでは筐体とスターベースが一体化してしまい折角のスターベースの良さが生きません。
車で言えば、サスペンション部とボディーが直付で一体化するため乗り心地は極端に悪くなります。
そこで、KP-1100と同様に「高剛性メカニカル・ショート・サーキット」と呼ばれた技術を応用しました。
1、モーター、ターンテーブルはフレームに剛体結合
2、筐体はフレームに弾性結合
3、電源トランスは筐体に弾性結合
4、インシュレーターはフレームに対して 剛体結合
というようになります。
KP−1100は、アナログ・プレーヤーとしては驚異的なS/N 比で、上級機の L-07Dに勝るとも劣らないと言われていました。
それは優れたダイレクト・ドライブモーターだけの成果ではなく上記の組み合わせによる総合的な組み合わせによる物です。
ダイレクトドライブとベルトドライブの違いはありますが、ベースとなる構造が同じであるため『筐体はフレームに弾性結合』という部分はレーザーターンテーブルでも有効のはずです。
オリジナルは筐体をスターベースに固定されていますが、筐体が受ける振動などをカットするためにスターベースと筐体の間に特殊インシュレーターを入れて『剛体結合』ではなく『弾性結合に』しました。
また、レーザーターンテーブルの電源を担うトランスは、プレーヤーとしては異例の直径約110mmの大型トロイダルトランスが使われています。
オリジナルはトランスを1mm厚のシャーシーに固定していましたが、3mm厚のシャーシーとトランスの間に特殊な樹脂ワッシャーを入れてKP-1100と同様に『電源トランスは筐体に弾性結合』としました。
改良した本人の感想ですので鵜呑みにせず、差し引いてお読みいただければ幸いです。
アルミ製の新ベースによりスターベースとインシュレーターが剛体結合し、しっかりと水平が出るようになり、新筐体の重量も加わって音の重心が下がりました。
今までトランスの取り付け位置により筐体の重量バランスは極端に後ろに寄っていましたが、R形状のムクのアルミの塊を左右に配置したため筐体バランスは前後で揃い、スピンドル位置となりました。
また、fo.Qやインシュレーターなどの防振対策により動作音だけでなく聴感上のS/Nは上がりました。
そして何より新筐体によって他のオーディオ機器との違和感が少なくなりました。
まだ、ピックアップ部の改良もあるのですが、回路の改良を先に行いました。
音楽の友社 刊
オーディオそしてレコードずるずるベッタリ、
その物欲記《ぶっといアナログな音を追い求め》
田中伊佐資 著/2016年10月に発売された上記の〔ONTOMO MOOK〕に
「改めて世に問うレーザーターンテーブルの実力」というタイトルで6ページに渡り紹介頂きました。
掲載された26名の方のアナログ事情はレコードを心から楽しんで(苦しんで)いらっしゃる多くの方のオーディオライフに必ず役立つと思います。
また、26名のアナログマニアの一人に選んで頂き感謝致します。
じっくりとご覧頂ければ幸です。
ネットでもご購入頂けます。